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若草色の発芽

1年の畑仕事の中で、一番緊張するのは発芽の時期だ。
蒔いた種は、ちゃんと発芽できるのか。

まるで心音を確認できるまでは安心できない妊婦健診のように、この時期は毎日のように畑に赴いてしまう。

そして、発芽を確認できた時には、喜びと安堵の中、その小さくも神々しい双葉をそっと撫で労うのが、春の楽しみ方だ。

よく出てきたね

そこから根付くまでは、特にしてあげられることは何もない。
それでもやはり成長が気になって、毎日のように畑に来ては、声をかけてしまう。

手をかけてやれない時でも、
目をかけてさえいれば、植物は枯れることはない。

目をかけなくなると、思い出した頃には枯れているということが多かった。

そんな経験を繰り返して、
こちらが心を寄せて見てさえいれば、大丈夫だと思えるようになっていた。

愛するって、目をかけ手をかけてあげることなんだと、
畑仕事と子育てを通じて思うようになった。

心を込めて目を向ける
心をこめて手をかける

そしてら、植物も子どもも安心してまっすぐ育つ。

ただ実際は、我が子に対してはなかなかできないもので、
こちらが、あるべき姿を期待して見たり、
皆と同じようにと矯正するような手のかけ方をしてしまう。

理想や他者に目が向いて、
子どものありのままの姿を見れていない。

親がよそ見をしてることを、子どもは癇癪や反抗、愚図るといった態度で知らせてくる。

まっさらな目を向けることができたなら、
曇りを払ってありのままを見ることができたなら、

子ども達が、どこにどう伸びたがっているか、自然と分かるのかもしれない。
そしたら自ずと手のかけ方も分かるのかもしれない。

言葉を持たない植物とは、こちらも素直に向き合える。
そこから学べることを、私の不器用な子育てに少しでも反映できたらいいなと思う。

まずは、今、この野菜を見守るこの目を
子どもたちに向けてみよう。
大切な人に向けてみよう。

今の私にできることは、純粋な目を向けること。
それならできるはず。

私の目の曇りに気づかせてくれる、純真な若草色の発芽だった。

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