目に映る冬の景色に、心が満たされていく。
人生の晩年にならないと味わえないと思っていた、世間から切り離されたような心の静けさを、
人生の夏とも呼べる子育て真っ只中のこの時期に味わえるなんて、思ってもみなかった。
冬の有難さを今、実感している。
春を歓び歌う鳥たちのさえずりや
生命を賛美する花の色
夏の勇ましいほどの蝉の声や生い茂る緑は、
人を「動け、歌え」と掻き立てる力強さがある。
その伴奏は、秋の紅葉をピークに燃え尽き、
やがて音のない、無彩色の冬が訪れる。
冬の訪れは、その活気溢れる能動的な営みから、人々を解放する。
静けさの中で焚べる薪の音、
頬を紅く照らす火の灯りは、
走り抜けた人を優しく休息と安堵へと導く。
まるであらゆる生命の活動が止まっているように見えるこの冬の時期を、
人は人生の晩年と重ねて表現する。
それまでは、ひたすら駆け抜けることを賛美するかのようにひた走る。
けれども、この豊かな静寂の時間を、晩年にならないと味わえないというのは、なんと勿体ないことだろう。
冬の休息と充電の恩恵で回復される心身が迎える次の春は、可能性に満ち満ちているのだから。
次の転生よりも、次の季節に繋げたい。
自然は、1年のサイクルの中で、人の息が上がらないペースで営まれている。
その変動的なリズムは、恒常を良しとする社会の営みとは相容れないものだ。
だからこそ、自然のリズムと調和し四季に導いてもらう暮らしに回帰することは、
心身を楽に、そして豊かにしてくれる。
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