下処理をしないで草木染めができる
私が草木染めで嫌いだった工程が1つあります。それは、
です。
木綿や麻という植物性の繊維は、タンパク質がないので、シルクやウールのようにそのままでは染まらない。
だから、染める前に必ず、豆乳などタンパク質に漬け込んで下処理をするという工程がテッパンです。
私もそれに倣って我流でやっていましたが、
どうも豆乳につけることで木綿本来の肌触りや風合いは変わってしまうし、染液にも、豆乳が混ざって白濁色になるし、色が濁る感じが否めない。
なんなら、染色に絶対必要とされる下処理を、むしろ、邪魔に感じていたのです。
そんな中、この下処理をしないで草木染めができる方法を編み出した方と出会って、大阪まで学びに行ってきました。
自分で育てて紡いだ糸を持参して、たくさん実験させていただきました。
すると、草木染めの常識を覆すのは、下処理を無くすというだけではありませんでした!
媒染を変えずに色を変える技も編み出されていらっしゃったのです。
・媒染を変えずに、日本茜から様々な色を引き出す方法がある
草木染めは、色を変えたければ、媒染をアルカリ性にしたり酸性にするなど、媒染で調整するのがお決まりですが、
今回は、媒染はみょうばんだけで、これだけの色の変化が出せています。
媒染の金属に色が乗るだけで木綿には乗っていないから
と、今回の講師であり、一般社団法人日本アカネ再生機構代表の杉本さん。
木綿と植物の色とが融合しきれていない感覚は、下処理だけでじゃなくて媒染剤にも理由があったなんて!
言語化できない違和感が、実証と根拠(データ)で裏付けされながら解明されていく、学びの快感を味わいました。
そして、仕上げに丁寧にすすいでも、まったく色は抜け落ちず。
色鮮やかに色濃く染まっているその様は堂々たるもので、淡さを良しとする草木染めの色ではありませでした。
目にも鮮やか、でも、肌触りは木綿の手紡ぎ、手織りの柔らかがそのまま!
色に濁りのない、木綿と色とがしっかり融合しているのを感じられる染めでした。
太陽の下で風に揺れる布を見ながら心まで弾んで、乾く間も惜しんですりすり触っていました。
写真は、同じ日本茜の根で染色した、いわば親が同じの兄弟姉妹の色です。
それでこれだけの色の展開が生まれるんですよね。
日本茜で茜空を表現できる
と昔から言われた理由を、目の当たりにできたのでした。
ひと昔前までは、当たり前のように道端に咲いていた野草である日本茜は、今はもうすっかり姿を消してしまいました。
茜色は、西洋茜やインド茜が主流で安価でたくさん手に入るので事足ります。
でも、やはり、この日本で愛されてきた、本来の茜色はどんな色なのかその色を見たいという思いと、
それはその土地に住む人に寄り添うように作用するはずだ
という思いがあるんです。
その優しい味方を安易と手放してしまうのは、とても勿体無いことだと思うのです。
ならば、何千年と同じ土地で共存してきた植物と民族には、もっと強力な相互関係があるはずで、それは、もはや土地神様と同じに思えるのです。
だから、その植物を、守りたい、繋ぎたい、使いたいと思うのです。
今年種を蒔いた日本茜の根が染色に使えるようになるまで早くてもあと3年。
少し長い道のりですが、日本茜の魅力を、力を、働きを存分に引き出し、日本茜と人の交流が再び盛んになる
暮らし方を、遊び方を、探っていきたいと思います。
今回、染色の世界の定説や常識、学者が言ってることが全てではないことを、自分で証明する行動力と情熱に
感化される出会いでもありました。これは、色の世界に限った話ではないのでしょう。
素晴らしい学びの機会をありがとうございました。
一般社団法人日本アカネ再生機構
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