耕作放棄地をエデンにすると夢を掲げて、やっと手に入れた農地。
けれども現実は、耕作放棄地は、石だらけだった。
貸し農園がお膳立てされていた畑だったと思い知る。
土の中にはびこる根と石の地下組織が頑丈すぎて、鍬が入らない。
途方にくれる。
こういう時は、編み物で培った意識に切り替える。
「先を急がない。目の前の目を淡々と。その繰り返し」
この思考回路に切り替えて、
今、足元にある30センチ四方の空間だけに集中する。
この空間だけを、綺麗にする。
できたら一歩だけ進んで、また30センチ四方に集中する。
先は見ない。
時々顔を上げて、自分が綺麗にした道筋に満足して、また手元に戻る。
この繰り返し。
これが、確実に進む方法。
汗が土に染み込んでいく。
自分の息遣いが大きく聞こえる。
心が無になっていく。
ひたすらひたすら畑の石を取り除く作業。
私が歩いた後は、土が蘇る。
私が手を入れた場所は、種を迎え、育む土地となる。
地球上でほんのわずかな面積だけど、直接地球に触れ、自らの手で起こせる確かな変化。
できるところまででいい。
一歩一歩、丁寧に。
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